Mar 03, 2008
タッチ・オブ・ピンク
- Touch of Pink
- 2004
- Canada / UK
- IMDb
- ゲイが描かれている
- 恋愛
- コメディ
- カミングアウト
- 結婚
- 家族

ソニー・ピクチャーズから「ボーイ・ミーツ・ラブ」というタイトルで日本版も出ているのですが、アメリカ版の方もリージョンALL仕様で日本語字幕が出るし、タイトルもデザインも作品に合っているので、こちらの方がオススメ。
Story
イギリスのロンドンで白人のボーイフレンドジャイルズと同棲しているインド系カナダ人のアリム(ジミ・ミストリー)の元へ、突然アリムの母ヌルがやってくる事に。ジャイルズの両親にはすでにふたりの関係は受け入れられているが、カナダのイスラム系インド人の社会で暮すアリムの母ヌルにはふたりの関係どころか、自分がゲイである事も言えずにいたのだから大変。しかもヌルは自分の姉であるドリーが息子カレドの結婚を目前にウキウキと結婚式の準備をしているのを見て、自分も息子アリムの結婚式を開きたいと思っていた。一方アリムには彼にしか見えない友人がいた。幼い頃から彼の側にケイリー・グラント(カイル・マクラクラン)が現われて、色々とアドバイスをくれるのだった。今回もそのアドバイスを信じて、せっせと母から自分がゲイである事を隠す準備をするのだが……。
Review
この映画、上記のストーリーだけを書いたら、なんだかよくあるタイプの物語なのだけれど、なかなかこの先が色々とひねりがあって面白い。それに、これだけだと母親がただの息子を圧迫する存在の様だけれど、じつはこの映画は、ヌルの人生も描いていて、彼女の立場からも物語を見る事ができる。当初の評判では「ウェディング・バンケット」の二番煎じと言われていたけれど、どうして?全然違うじゃない、というのが正直な感想。「ウェディング・バンケット」では結局親のために結婚を考えて、子供もできて、カムフラ結婚の女性とゲイのパートナーとなんとなく丸く治まって家族ができた感じだけれど、「Touch of Pink」の主人公はそもそも親のために結婚を考えたりはしていないし、カムフラージュのための女性も現れない。(ジャイルズの妹デリアが当初そんな感じだったけれど、あまりにも無理があり過ぎて失敗。このエピは全然引っぱらない。)母ヌルは当初、自分が負け犬にならないために必死なのかと思ったけれど、じつはヌル自身がかつてアリムのようにイスラムの社会に背を向けて生きた事があり、そこで挫折してからイスラムの女性として抑圧されてきた事で、彼女自身もアリムを抑圧してしまう事となっていた事が描かれるなど、彼女の複雑な立場も描かれていて、決して「家のため」とかそういうものを押し通すものではない。この映画を通して感じたのは、イスラムの社会で規範から外れた者の生きにくさと、それでもその事を笑いとばして自分らしく生きようとする姿、そして民族の誇りの影に潜む白人社会への憧れなど。アリムのもとに現われるケイリー・グラントも、ヌルが若い頃に夢見たドリス・デイも、密かにあった白人文化への憧れの表れであり、自分の属する社会から解放してくれるであろう希望だったのだと思う。ヌルはそこで挫折を味わい、貞淑な未亡人へと戻ってしまったが、アリムはもうそういう時代ではなく、かつて母がしたように、自分探しのロンドン行きで、親には言えないけれどそれなりに自分らしく生きる事ができていた。まぁそんなほろ苦さもありながら、この映画の良いところは、古き良き時代さながら、みんな何かしらハッピーな人達なのだ。憎めない人達がどんどん出てくる。映画を通して知るインド系イスラム社会の文化も興味深い。そして何よりおとぼけなのが、カイル・マクラクラン演じるケイリー・グラント。親族はこれを見て怒らないだろうか?(笑)まったくもって絶妙なタイミングでボケが入る。本人いたって真面目っぽいのに。しかもアリムがケイリーの言う事を聞いているうちは良いけれど、アリムの心の成長とともに、ケイリーの言葉がもはや意味をなさなくなってからは、滑る滑る。(笑)カイル・マクラクランは非常にこの映画でケイリー・グラントになりきるのを楽しんだらしく、その様子はDVDのコメンタリーでも良くわかるのだけれど、もはやケイリー・グラントに見えるかどうかは別として、非常に面白い存在だったと思う。コメンタリーは日本語字幕があった事もあって、何度も楽しんだけれど、エキストラが監督の親戚だったり、意外なところで監督のパートナーが出ていたりと、なかなかインディならではの楽しさがある。この映画はラブ・コメなわけで、かなりお気楽に作られているように見えるかもしれないけれど、アリムのことを母が理解し始めたシーンで、監督が「ぼくの人生では数年かかった」と言った重みがこの映画には込められているのだね。ちなみに、映画とは本当に魔法にかかった状態になるもので、当初ジャイルズを全くハンサムだと思わなかったのに、不思議と映画にハマってしまったら、ハンサムだと思えてきちゃったんだよね。アリムを演じたジミ・ミストリーもジャイルズのことを「ハンサムだ」と言っていた。ちなみに私がストーリーで見抜けなかったサプライズはヌルの姉ドリーの発言。(これはネタバレしないでおきます)
タイトルはケイリー・グラントの「ミンクの手ざわり (That Touch of Mink)」のパロディ。
日本でリリースのDVDは素敵なタイトルを捨てて「ボーイ・ミーツ・ラブ」という「ミーツ」を小さくしたデザインで「ボーイズ・ラブ」と混同するようなデザインで出ちゃいました。東京国際レズビアン&ゲイ映画祭および関西Queer Film Festivalでは「タッチ・オブ・ピンク」のタイトルで上映されていました。
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